イレギュラーなスタートとなった5年目のBリーグ      序盤戦の戦いに迫る

上位争いが熾烈な東地区 宇都宮と千葉が強さを見せつける

新型コロナウイルスの影響が今なお続く中、5年目となるBリーグは10月上旬に開幕した。今シーズンはB2から信州ブレイブウォリアーズと広島ドラゴンフライズが昇格し、降格クラブが0という特例措置が取られたため、初めて20クラブが東と西の2地区に分かれて優勝を争うことになった。

しかし開幕当初は入国制限で外国籍選手の多くが日本に入国できない状況になり、十分な調整と体制が整わないままシーズンがスタート。それでも11月に入り、ほぼ全員が入国および自主隔離期間を終え、フルメンバーで戦えることなった。

その中で特徴的なのが、東地区のレベルの高さだ。昨シーズンまでの地区分けでは宇都宮ブレックス、千葉ジェッツ、アルバルク東京とBリーグファイナルを経験したクラブが所属し、サンロッカーズ渋谷も昨シーズンは天皇杯で優勝している。今シーズンはここに川崎ブレイブサンダースも加わり、この5クラブで上位が争うと予想されていたが、SR渋谷が接戦の試合を勝ち切れずスタートダッシュに失敗。A東京、川崎も調整不足が感じられる不安定な内容となっている。優秀な帰化選手を有する宇都宮と千葉は外国籍選手のルール変更も味方につけ、豊富な選手層を武器に好調だ。

ここに旧中地区からクラブが加わった富山グラウジーズ、固いディフェンスとリバウンド力が武器の秋田ノーザンハピネッツが追随。ともに先に紹介したクラブに劣らない地力があり、今後も面白い存在になりそうだ。

攻守のレベルアップに成功した琉球と三河 西地区は両クラブが引っ張る?

西地区は琉球ゴールデンキングス独走の予感が漂っていたが、ここに来てシーホース三河が追随している。琉球はBリーグが始まって以降、毎年少しずつ足りないピースを補強しており、今シーズンは得点力不足解消に向け、#30今村佳太、#13ドウェイン・エバンスとフォワードを獲得。これで#3並里成、#14岸本隆一らガード陣と#45ジャック・クーリーらインサイド陣とのバランスが良くなり、得意のディフェンスも強化。開幕節で宇都宮に連敗してからは連勝を続けている。

琉球の特徴はベテランと若手の融合だ。豊富な経験を誇る並里、岸本がキャプテンシーを発揮し、外国籍選手も海外で複数チームを渡り歩いている。そこに今村や#88牧隼利といった将来有望な若手が思い切ったプレーを見せており、彼らのパイプ役としてキャプテン#24田代直希の存在も心強い。この田代はプレーの成長が著しく、フォワードながらフィールドゴールの確率が5割近い数字を誇る。ディフェンスでも相手のエースにマッチアップでき、攻守で貴重な存在になっている。

三河はシーズンのスタートこそリズムをつかめなかったが#14金丸晃輔、#54ダバンテ・ガードナーを軸にどこからでも得点が奪える。また新外国選手も徐々に本領を発揮しており、#32シェーファー アヴィ幸樹も急成長。
失点も減少し、バランスの良い布陣で上位進出を狙う。

不気味な存在なのは滋賀レイクスターズ。黒星が先行しているが、A東京に勝利するなど、外国籍選手が合流してからは状態が良い。その中心は元NBA選手の#5ジョーダン・ハミルトンで、21.9得点に7.6リバウンド、6.5アシストと獅子奮迅の活躍を見せる。チームとして失点を抑えることができれば、上位進出も現実味が帯びてくる。

昇格組・信州と広島 チーム状況で明暗が分かれる

降格クラブがなかった今シーズン、B2から信州と広島が加わった。それぞれの開幕を振り返るが、広島は昨シーズンから外国籍選手を含め主力が変わらず、選手構成としては開幕から万全な状態で戦うことができた。

しかし外国籍選手の負担が大きく、3人とも初めてのB1ということでレベルの違いに苦しんでいる。B2ではゴール下を席巻できていたが、攻守ともに苦戦が続く。加えて日本人選手も苦戦しており、ベテラン#2朝山正悟の3Pシュート頼みではオフェンスは苦しい。

その中でルーキーの#5アイザイア・マーフィーの活躍は素晴らしく、外角シュートの正確さと躍動的なドライブを中心に11.9得点を記録。アクロバティックなプレーで、すでに広島の人気選手だ。他の選手が苦しんでいるだけに、22歳にかかる期待は大きい。

一方信州は、#50ウェイン・マーシャル、#55アンソニー・マクヘンリー、アジア特別枠で獲得した#27ヤン・ジェミンの3名の合流が遅れた。チームの骨格ができていないままシーズンがスタートしたため、開幕から6連敗。それでも外国籍選手が合流すると、調整期間が短い中でも川崎と三河から勝利をあげるなど、ポテンシャルの高さを見せた。

攻撃は司令塔#8西山達哉、ハンドラー役も担うマクヘンリーを軸に2対2のピックアンドロールが軸で、彼らが相手のディフェンスを崩す役割を担う。また3Pシュートが打てる選手も豊富で、1試合平均9.4本の成功数はリーグ3位で。まだ本調子でないヤン、#34小野龍猛のフォワード陣が復調すればさらに攻撃の幅は広がるだろう。チームとしても1試合平均70点以下の得点力を上げることができれば、B1でも戦うことが十分可能だ。

早くも正念場の広島と光明が見え始めてきた信州。状況は違えど試行錯誤しながら初のB1の舞台で懸命に戦っている。

選手の個性を最大限に発揮 富山が今シーズンのダークホースに

今シーズン、富山の勢いが止まりそうにない。チャンピオンシップに出場した一昨シーズンから一転、昨シーズンは厳しい戦いとなり勝率5割以下に。ヘッドコーチや外国籍選手など、編成にメスを入れることになった。

指揮官には長年京都ハンナリーズを率いた浜口炎ヘッドコーチが就任。浜口ヘッドコーチともに#32ジュリアン・マブンガ、三河から#77岡田侑大、宇都宮から#21橋本晃佑とオフェンスに強みを持つ選手を補強した。

ここに#11宇都直輝も合わせ、個性派がそろったチームがどんな化学変化を起こすのか期待があった一方、不安も入り混じっていたがそうした懸念は開幕後に一掃された。

元々浜口ヘッドコーチは選手の個性を最大限に生かすスタイルで、京都ではマブンガの万能性が開花。富山でも宇都とマブンガがボールをシェアしながら攻撃を展開するスタイルが早くも確立されつつある。この2人の成績を合わせると得点が33.7、アシストが12。単純計算ではあるが、88.9の1試合平均得点の内、60点近い得点が宇都とマブンガから生まれているのである。もちろん2人のパスを受けてシュートを沈める選手がいてこその数字で、外角では#12前田悟、#14松脇圭志の若手コンビ、インサイドでは#0リチャード・ソロモンが大暴れ。ちなみに1試合平均89.9は千葉に次ぐ2位である。

今後は強豪との戦いが続くため、あえて課題を挙げるとすればミスの多さが目立つ。ターンオーバーの1試合平均12.5はリーグでは中位であるものの、宇都とマブンガだけで6.7と半以上を犯している。攻撃の起点でボールを持つ時間が長いからこそ、少しでも数字を減らすことができればその分攻撃の回数も増えることになる。

今シーズン、強豪の仲間入りができるかは正確性がカギを握っている。

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