昨秋優勝の日体大、連覇に向けて好調を維持する猪原隆雅主将

 首都大学野球春季リーグ戦。昨秋の王者、日本体育大学は2連敗からのスタートとなった。 

 報道もされたが、多くの部員が寮生活をしている日体大では3月中旬に新型コロナウイルスのクラスターが発生した。主力選手も部屋から出られない日々が続き、3月末頃まではオープン戦もできなかった。短い準備期間で4月10日の開幕を迎え、東海大に2連敗。6校が2戦総当たり勝率制で戦う今季、1つ負けると優勝が遠のく。連覇を果たすには、もう負けられなかった。 

 そして迎えた帝京大戦。1週空いて練習時間を多くとれたことも功を奏したのか、1戦目は8-1の快勝、2戦目はサヨナラ勝ちという結果で終えることができた。ここまでの4試合で、特に目につく選手がいた。猪原隆雅主将(4年・大冠)だ。 

好調を維持する猪原隆雅主将

 スタンドから見る猪原の背中には闘志が宿っていた。必死で塁に出ようという気持ちを感じるスイング、守備位置のライトからは大きな声でチームメイトを鼓舞する。帝京大との試合後、主将としてチームを引っ張る猪原に話を聞いた。 

経験豊富、主将となった猪原隆雅の活躍

「大冠の主将だったイケメンキャッチャーが日体大に入ったんだよ」 

 そう日体大野球部OBから聞いたのが、猪原の存在を認識した最初だった。確かに端正な顔立ちで、薄茶色の目はキラキラしている。その後すぐにオープン戦で見かけるようになり、1年秋からはリーグ戦にも出場するようになった。打撃への期待は大きく4番を任されることも多かったが、守備はキャッチャーの他にファーストや外野などいろいろなポジションに挑戦することとなった。今は主に、ファースト、レフト、ライトなどを守っている。 

 そんな猪原が主将となって迎えた、初めてのリーグ戦。チームは2連敗のスタートとなったが、自身は初戦の第1打席から安打を放ち、2戦目には3安打1打点という結果を残した。4試合を終え、15打数7安打4打点 打率.467、出塁率に至っては.556と5割を超えている。主将にもいろいろなタイプがいるが、猪原はプレーでチームを引っ張ることのできる主将となっていた。 

 古城隆利監督も「まっすぐにはしっかり合わせていて、変化球だと前で泳ぎながらでも捉えて拾えている。頑張っていますよ」と猪原の活躍を喜ぶ。 

 自身が好調でも、最終的にチームが勝たなければ意味はない。2連敗からチームを立て直すために、猪原は主将としてチームにどう働きかけたのだろうか。 

「リーグ戦前のオープン戦では打線も繋がったりいい雰囲気でできていたのに、思ったよりうまくいかず2連敗してしまいました。(帝京大戦まで)1週空くのがチームにとっても僕にとっても大きかったですね。だから、2連敗してしまった日のミーティングで『対策を練る時間もあるし、あと8個勝てば優勝の可能性はある、8個勝てばいいという考え方でいこう』とチームに言いました」 

 猪原の言葉の通り、帝京大戦までの2週間で対策を練って練習を重ねた結果、まず2個勝つことができた。そんな猪原自身も、ある選手のおかげで奮起できたという。 

「東海大第2戦の7回、満塁で回ってきたのにライトフライで終わってしまい、2塁ベース上くらいで守備のグローブを持ってきてくれるのを待っていたんです。あとから聞いたら本当は他の子が持ってくるはずだったらしいんですけど、僕が気負っているなっていうのを感じて、副キャプテンの橋本篤弥(4年・敦賀気比)が替わって持ってきてくれたんです。それで『もう1回打席がまわってくるから気持ち切らすなよ』って言ってくれたのがすごく大きくて、9回にまわってきたときも打ってやるぞという気持ちで打席に入れました」 

 猪原はこの打席で、適時打を打つことができた。普段から橋本の存在は大きいと感じている。「僕は大阪出身で橋本は兵庫出身、1年生の頃から仲がいいです。寮生活でも結構一緒にいるんですけど、僕の表情とか見ていろいろやってくれているというのは感じています」。 

 日体大は約200人の部員がいる大所帯だ。主将とふたりの副主将が力を合わせてチームを引っ張っていかなければならないし、どう引っ張っていくかも考えていかなければならない。猪原は「ミーティングなどで発言したり指示を出す立場の人間として、練習中に率先して動いたりするのはもちろん、私生活から責任を持った行動をとらないといけないと思い気をつけています」と主将として心掛けていることを話してくれた。 

 最後に、優勝に向けて今後どう戦っていくかを訊いた。 

「今日、勝つことはできたんですけど、守備のミスがあったりバントが一発で決まらなかったり修正していくべきところはたくさんあります。1点差の接戦となってもものにできるように、チームで気を引き締めてやっていきたいと思います」 

 残り6試合。猪原、そして日体大は連覇に向けてどんな戦いを見せてくれるのか。残念ながら無観客試合ではあるが、その戦いぶりをぜひLIVE配信でチェックして欲しい。 

首都大学野球連盟ホームページ 

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好きな時に好きなだけ神宮球場で野球観戦ができる環境に身を置きたいと思い、OLを辞め北海道から上京。 「三度の飯より野球が大好き」というキャッチフレーズと共にタレント活動をしながら、プロ野球・アマチュア野球を年間200試合以上観戦。気になるリーグや選手を取材し独自の視点で伝えるライターとしても活動している。 大学野球、社会人野球を中心に、記者が少なく情報が届かない大会などに自ら赴き、情報を必要とする人に発信する役割も担う。 面白いのに日の当たりづらいリーグや選手を太陽の下に引っ張り出すことを目標とする。

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