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大分トリニータ ”一致団結”プロジェクト ~みんなの想いをピッチへ~大成功の舞台裏に迫る(前編)「クラブ存続のため、想いを共感できた」

5月16日、大分トリニータのクラウドファンディング「#一致団結プロジェクト」が大盛況のうちに幕を閉じた。集まった支援金額は88,968,000円、支援件数は4,398件にのぼった。

当初の目標は5,000万円。初日だけで2,000万円を超え、SNSでもトレンド入り、瞬く間にメディアからも注目の的となった。支援の輪が広がっていき、経営危機など幾多の困難を乗り越えてきた大分トリニータのサポーターの底力を改めて見せつけた。

今回、スポーツ界を席巻した「一致団結プロジェクト」の舞台裏を前後編に分けてお送りする。

メンバーとして運営を行ってきた水島伸吾氏、橘良平氏、吉門恵美氏の3名に登場いただき、プロジェクトを振り返ってもらった。

(取材 / 文:白石怜平 ※以降敬称略)

今回プロジェクトに協力いただいた水島伸吾氏(写真左上)、吉門恵美氏(同右上)、橘良平氏(同下)

「クラブ存続のために」サポーターから感じたパワー

ー約1ヶ月半に亘るプロジェクト、盛り上がりの中終えられたと思います。まずはこの期間振り返っていかがですか?

水島:今回のクラウドファンディングはコロナ禍の中でクラブ存続のために何とかしたいという想いがありました。昨年も2回(クラウドファンディングを)実施しましたが、3回目に懸ける我々の想いをしっかり共感いただけることが重要なポイントと考えていました。

我々は支援をいただく立場なので”頑張ります”ではなく、支援者の皆様の共感をどれだけいただけるかという点に着目して行ってきました。

橘:反響が想定よりもはるかに大きく、支援が広がっていくのを見て、トリニータサポーターの『クラブを支えるんだ!』という気持ちをすごく感じることができた、そんなプロジェクトだったと振り返っています。

吉門:私もクラウドファンディングには第1弾から取り組んできました。過去2回もサポーター様の想いを感じていましたが、第3弾はそれまでとある意味重みの違う「チームの存続」でした。クラブの今後を左右する内容と金額でしたが、支援してくださるサポーター様に私たちの想いが伝わったと感じることができました。本当に感謝しています。

ー目標金額は5,000万円から始まりましたが、最終的には9,000万円近くまで支援が集まりました。実際の金額を目にしたときはどういう心境だったでしょうか?

水島:本当に驚きました。当初は5,000万円という目標を必ず達成することを目指してやってきましたが、実際に支援金額を見てここまで来たのかと。我々としては、”支援していただくんだ”という強い気持ちを持って、準備期間から一生懸命取り組んでいたので本当に嬉しかったですね。

プロジェクトを振り返る水島

橘:私も見てびっくりする数字でした。当初目標の5,000万円を4月末に達成し、そこからプラス3,000万円の高い目標を立てた際には「本当に(8,000万円)に行くのか?」と思っておりました。ただ、最終的な支援額を見た時に、決して高い目標ではなかったと。「トリニータに関わる人たちの想いの強さ」を感じましたね。

吉門:最終日(5月16日)に大きな伸びがあったのですが、「本当にどこまでいくんだろう」というほど、どんどん支援額が増えていって。5,000万円の目標を達成したからもう終わりではなく、”少しでも多くチームのために”と思ってくださっている方の多さを目の当たりにしました。

ースタジアムでサポーターの皆さまに声をかけていただく機会はありましたか?

吉門:今回はスタジアムでも支援を受け付けていて、現金を握り締めて来ていただいた方も多くいらっしゃいました。直接サポーターの方の声を聞くことができたのですが、「こういった形で支援出来て良かった」と言っていただいたのが印象に残っています。

ニータンの存在の強さを改めて実感した吉門

それぞれの役割を明確に分担

ー今回の成功要因の1つとしまして、運営側が力を入れた点や工夫した点は何がありますでしょうか?

水島:目標を達成するためには皆さんに喜んでいただけるリターン品を用意することが必要不可欠と思っていました。過去のシーズンで着用したジャージやユニフォームなど普段手に入らないものだったり、目玉はニータンのぬいぐるみ。

一体50,000円という高価格なのですが、話題になったこともあり430体もの支援をいただきました。皆さんがより支援したいと思っていただけるようにプロジェクトメンバーでアイデアを出し合ってましたね。

吉門:準備期間が1ヵ月と短かったので、スタートする日に向けて逆算してスケジュールを立てていました。過去2回での反省を生かしながらやっていこうと話をしていました。最初から広報や他部署とも連携をしっかり取れたので、よいスタートダッシュを切ることが出来ました。

(過去2回との改善点とはどんなところでしょうか?)

水島:役割分担を明確にしたことと、期限を区切ったことです。「〇〇さんが何をやっているか、それがいつまでなのか」という部分を意識しながら進めていったので、メンバーは相当大変だったと思いますが、そのスケジュール感を守りながら止めることなくやり切れましたね。

また、今回も過去2回に引き続きスポチュニティさんの力をお借りしました。各担当に対して人員を配置し、かつ我々と同じ意識を持って取り組んでいただきました。プロジェクトがスタートしてからのサポートも含めてスポチュニティさんのおかげでもあります。我々だけでは成し得なかったと思います。

橘:プロモーションにおいて、クラウドファンディングの周知を図るために、クラブとして初めて”SNSタイムラインジャック”企画で、Twitterのトレンド入りを狙うということをやりました。そのほかSNSやメルマガの活用など含め、新しいことに取り組むことができたことが良かったと感じてます。

Twitterで行った「SNSタイムラインジャック」

吉門:SNSについてはトップチームにもすごく協力いただきました。練習前の時間を割いていただき、チーム全員に「こういう趣旨でクラウドファンディングをします」と社長を通じて説明して、内容も理解いただきました。

選手自身がSNSで自主的にプロジェクトへの賛同をお願いしてくれたり、支援が増えるごとにサポーターさんへ感謝の気持ちを発信いただいたりしていたので、本当にチーム・サポーター・運営が一体になって動けたと思っています。

ー準備する中で何が1番大変だったでしょうか?

吉門:リターン品の選定ですね。支援してくださる方にどういったものが一番喜んでいただけるのか、その金額の設定とか難しかったです。ただ、その辺は関係各所と相談しながら決めていったので、自信を持って用意できました。私たちだけで考えるのは難しかったので、スポチュニティさんにアドバイスをいただけて良かったと思っています。

最も力を入れたのがリターン品。過去のシーズンのユニフォームなどが好評だった

水島:確かに「〇〇をリターン品として出しても、果たしてそれが喜んでもらえるのか」そういった部分の中で難しさなど精神的に大変だなと感じる部分はあったかもしれないです。

プロジェクトを進めていく中で実際に大変なことはありましたけれども、そこに「難しくて前に進めない」などと思うことはあまりなかったです。

それよりも開始してから数字が積み上がってきて、やってきたことが形として出て、それを日々感じていくうちに喜びが倍増していくというか、大変だったことは忘れていましたよ(笑)

橘:私は支援者の方々の想いに応えなければいけないという使命感でいっぱいでしたね。みなさんのニーズに敏感になってすぐ対応出来たことがやりがいの1つだったと振り返っています。

使命感を持ってプロジェクトと向き合ったという橘

支援の柱となった”ニータン”

ー今回最も話題になった1つは先ほどお話に出たニータンのぬいぐるみ。2度の増産がありましたが、嬉しい悲鳴だったのではないでしょうか?

水島:当初は50体からスタートの予定だったのですが、前評判などを見ていて急遽80体に再設定したのですが、それでも開始90分でなくなりまして(笑)業者と緊急で打ち合わせをしながら、当日中にさらに120体追加で出したんですけども、それも1日でなくなりました笑。

今回支援の話題となった”ニータンのぬいぐるみ”。全体の4分の1を占めた。(写真はイメージ)

(その時のみなさんの様子は?)

水島:更新するたびに支援額が上がっていく様子を見ていたのですが、ぬいぐるみが本当にすごい勢いで。メンバーみんな「今(在庫は)どういう状況?」と確認しながら「まずい、このままだとなくなる!」と。休みの日もこまめに状況チェックをしていました。

さらに指原莉乃さんが「ニータンのぬいぐるみが家に届きます〜」とTwitterで発信してくれたのですが、その時も既になくなりかけていた状態でした(笑)。

指原さんにご支援をいただことでさらに申込数の伸びが見込まれると思われましたので、業者とかけあって語呂をかけた345(さしこ)体の増産決定にこぎつけました。ぬいぐるみだけで支援額の約4分の1が集まりました。

(後編に続く)

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