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新たに、そしてもう一度心を一つに コロナ禍に揺れる大学スポーツの今 神奈川大学男子ラクロス部の再挑戦(前編)

昨年からの新型コロナウイルス感染症拡大により、学生スポーツを取り巻く環境は大きく変化を遂げた。大会の中止、練習場の閉鎖、活動の自粛…。長引くコロナ禍の中、学生たちはどんな状況にあり、どのように競技に向き合っているのか。今回、関東学生ラクロスリーグに所属する神奈川大学男子ラクロス部の隅野英樹ヘッドコーチ(HC)、小楠章太主将に、大学スポーツのリアルとチーム状況を語ってもらった(注:写真は取材、撮影時のものであり通常はマスク着用で活動しています)。

コロナにより練習環境の変化、活動制限などの影響が

–隅野HC、小楠主将にお聞きします。新型コロナウイルス感染症拡大はラクロス部の活動にどんな影響がありましたか?

隅野HC:去年は学校としての活動制限もあり、ほとんど練習は行なわれませんでした。公式戦の機会はあったものの、そのための練習を行うことができないという状況でした。
今年に入ってからは大学に申請した上で、少しずつですが練習・活動の許可が下りるようになってきていますが、コロナ以前との違いとして、やはり練習環境は特に大きな影響を受けています。


神奈川大学はキャンパス内にグラウンドがあり、以前までは自由に練習が出来ていました。しかし現在は大学のグラウンドが使用禁止となっている為、外部のグラウンドを借りて練習しています。当然、利用できる時間も限られ、グラウンドまでの移動も発生する為、毎日練習することが難しく、基本的には土日しか練習が出来なくなったという状態です。

また、外部グラウンドを使わせてもらっていますが、日によって場所が変わることはもちろん、前日にならないと使用できるかどうかわからなかったり、人工芝ではないグラウンドも多く、雨が降ると使えないなど練習自体が確実に行えなくなったことが一番の環境面での変化です。」

小楠さん:今までは考えることのなかったグラウンドを借りるための利用料や、移動による電車代も一回の練習で数千円掛かっている上、コロナにより生活を支えるためのアルバイトもままならなくなりました。その為、ラクロス部での活動費を捻出することも難しく、費用面でもこれまでには無い負担を強いられています。学校のグラウンドが使えるまで練習参加を見合わせている新入部員や、4年生の仲間で活動費を払えなくなり、休部せざるを得なくなった部員もいます。

小楠章太主将(4年)

3年間、勝てない状況が続いたことで失われた自信

神奈川大学ラクロス部が迎えている苦境はコロナ禍だけではなかった。結果が出ない競技成績。小楠主将が新人だった2018年に挙げた勝利を最後に、ここ2年間は公式戦での勝利から遠ざかっている。一昨年には関東学生ラクロスリーグ戦において、2部から3部降格という悔しさも味わっていた。 2016年には1部に所属していたチームが2年に渡って勝てなくなっている理由。それはチーム全体から自信が失われていたことだ。

「2部在籍時には、綺麗にラクロスをプレーしようとしていました。『このくらいやっていれば勝てるだろう』『一部昇格は無理でも二部には残れるだろう』といった思いから、泥臭いプレーが出来ず、一生懸命にやれていなかったことが挙げられます。

そして結果が出ず、練習をしても勝てないだろうという思いが広がっていきました。本来目指していた「一部昇格」という目標をチームとして掲げられないほど、自信を失っていきました。自分たちの実力では、それだけの高い目標を設定できない。そんな雰囲気でした。」

練習中の風景 外部のグラウンドを借りての活動が続く

指揮官が感じたチームの状況、これまでとの違いとは

2016年までコーチとして指導にあたり、今シーズン、再びコーチとして復帰となった隅野HCも、以前のチームと雰囲気の大きな違いを感じたという。

「以前コーチを務めていた2016年、チームは関東学生リーグ1部にいました。2015年には部員数も100名を超えていたのですが、毎週ミーティングをするなど、チーム内でのコミュニケーションを絶やさないことに務め、当時はまさにチームが『一丸』になれていたことを憶えています。

今シーズン帰ってきて『全然、コミュニケーションしてないな』というのが第一印象でした。部員数も少なくなったこともあり、もう少し和気あいあいという雰囲気かと思っていたのですが、コロナの影響もあってか、チーム内のコミュニケーションの少なさを感じました。」

勝てなくなったことで、自信を失いネガティブな空気に覆われていたチームが、コロナ禍によりさらに選手間の距離が遠ざかった。部での活動が行われなくなると当然、チームメイトの顔を合わすことすらままならなくなる。「部員との会話の機会が失われ、個人としてチームとの関わりが持てなくなったことで、モチベーションの維持も難しかった」小楠主将は最も苦しかった時期をそう振り返っている。

隅野英樹ヘッドコーチ 今季より再びラクロス部を率いる

昨年からの新型コロナウイルス感染症拡大という出来事は、我々の日常生活に様々な影響を及ぼすこととなり、そして今回のインタビューは、学生スポーツの現場においても例外ではないことが伝わった。練習環境の変化や活動の制限など、想像以上に厳しい現実をつきつけられている中、来月より始まる関東学生ラクロスリーグ戦に挑む神奈川大学男子ラクロス部。
次回、後編では現在の苦境を乗り越え、新たに生まれ変わろうとしていくために必要なこととは何か、また、その先に描くラクロス部の未来について、指導者、選手という両方の立場から語って貰っています。(取材・文 佐藤文孝)

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